2012年04月24日

砂時計の国

『砂時計の国』

 高さ3cmの小さな砂時計の中には宇宙が詰まっている。きっかり3分間の寿命だ。その度に砂時計の国は滅亡と再生を迎え、人々は記憶と歴史を失い創造する。
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あるホームランヒッターの話

『あるホームランヒッターの話』

 とどのつまりは、私の不注意が原因だったと思うのですが、ある試合でホームランを打ったときに、球が私の魂も乗せてかっ飛んでいってしまったのです。呆けたように立ちつくしてしまいました。最高の一打と言えば聞こえはいいかもしれませんが、結局のところ、私は私を失ってしまいました。その私は今どこにいるのだろうと考えると、もしかしたら、ある野球少年の部屋の棚の上かもしれません。それはそれで悪くはないものだとは思うのですけどね。
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人の一部を愛するということ

『人の一部を愛するということ』

 僕は彼女の形の良い右手が好きだったので、交際を申し出たところ、彼女も僕の左手が好きだったと言うではないか。お互い照れながら握手した。僕の左手と彼女の右手は仲良く歩きだす。残された僕たちは「じゃあね」と片手を上げて別れた。
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2012年04月16日

(無題2)

(無題2)

 ……一体何が起こったのだろう。気が付いたら私は吹っ飛んでいた。雲を突き抜けコンコルドを追い越し、視界の端に地球の円形を認める。このまま空気摩擦で死んでしまうのか。気が遠のくうちに高度が下がり、懐かしの祖国、故郷、そして我が街、我が家が見えてくる。天文学的な確率の幸運に感謝する。最期がここなら思い残すこともない。が、神様は意地が悪いらしく、私が突っ込んだのは隣家の幼馴染の部屋だった。柔らかい感触と、悲鳴。私は頬を叩かれ、気を失った。

***

 茶林プレゼンツ。
 全ての元凶はこのツイート。
「ochabayashi@isayann そうだ胸に埋めたら張り飛ばされて地球一周してきて胸のクッションで助かったぜっていう話を書 via web」
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(無題)

(無題)

 真珠である。親指大の大変立派なものである。あんまり立派だったので祭壇に飾ることにする。浅瀬に作られた大理石の祭壇に飾る。暮れ泥む空。波が寄せて返す。手のひら大の深紅の絹に真珠を乗せると、ちょうど夕陽と重なる。眩く、とても目を開けていられない。高鳴る潮騒は幻聴のようで幻聴ではない。間もなく沈む祭壇、潮位はぐんぐんと、しかし静かに高度を上げていく。私は真珠を拾わなければならない。一度だけ天を仰ぎ見て海に潜る。潮位の上昇速度よりも速く泳ぎ下っていくと間もなく一点の深紅と、それよりもさらに小さい真珠を発見する。深紅に迫るほどにそれは大きくなる。視界の端まで深紅に染まる。次いで、真珠色に染まる。私の手のひらが真珠の表面に触れる頃には辺り一面は真珠の地平である。見上げれば、暮れ泥む空。寄せて返す波の音は幻聴のようで幻聴ではない。音のする方へ歩き出す。凹凸もなく滑らかだった地表が次第に色彩を帯びだす。草地に変わり、木々が生まれ、ほとんど洞窟のような森を歩く。その彼方には常に黄金色の光に溢れる出口がある。潮騒は止まない。幻聴のようでしかしやはり幻聴ではない。歩く。歩き続ける。そうして出口を抜けるとそこは浅瀬である。既に踝は海水に浸っていた。振り返れば森はない。全方位にわたって水平線が広がる。ただし墓石のような大理石が立っている。歩きだす。足元に光るものを見つける。

***

 一行幅の細長い紙に両面印刷してメビウスの輪にしてみて、エンドレスな物語を作ってみやう、という話の流れで。
 しかしこれは長すぎるだろう。(583字)
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2012年04月02日

きつね味/NOIFproject

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2012年04月01日

告白

『告白』

 春の夜に降る雨というものは風情があって良いものだ。深夜零時、私は床に入るまでのひと時を読書で過ごしている。手元にはすっかり冷めてしまったコーヒー。

 ――居た堪れなくなって顔を上げてみると、部屋の静けさにひどく驚く。こんなにも静かだったのかと。目で嗅いだ黒胡椒の香りを私の鼻は知らないし、目で触れた娘の手の柔らかさも私の肌は知らない。ましてや目で聞いた娘の告白など私の耳が知っているはずがない。まつ毛や唇があんなにも震えていたというのに。
 時計はもう一時半を示そうとしていた。明りを消して毛布を被る。目を瞑ればまぶたの裏にまつ毛や唇の震えが見えて、私は嫌な気持ちになる。

***

 タイトル競作の未投稿分。原因は、遅刻。
posted by いさや at 23:54| Comment(0) | 書き物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月28日

深海魚

『深海魚』

 恐竜図鑑を抱えて眠る時、私は一匹の深海魚になったような心地になる。柔らかい毛布が私を包み、視界は閉ざされ、自分の心音しかせず、自分の呼気のにおいしかしない。唯一、ままに動けるのが舌である。舌である私はぬらりと口蓋を抜け出し、胸に抱いた本の背表紙に沿って泳ぎ下る。深海魚もきっと、こんな真っ暗な海を泳ぐのだろうと思いながら。
 恐竜図鑑は両手で抱える程度の大きさであるが、舌である私にとってそれは校庭くらい広く感じるものだ。どこから読み始めれば良いものか。しかし迷う間もなく紙面に触れた傍から物語は始まっているのだ。私は空気を泳ぐ透明な魚になって、隕石が降り注ぎ火山が火を吹く様を見下ろしている。恐竜どもが群れを成して逃げ惑う。やがて彼らが死に絶え化石になるまで、私は時間の海を、ゆらりゆらりと泳いでいる。
posted by いさや at 21:37| Comment(1) | 書き物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ぼくたちのちっぱい

『ぼくたちのちっぱい』

 風呂上がりに髪を乾かしているときのこと。
 米粒くらいの小さな者どもが蛇口の上に、わらわら、わらわら、と集まってきて旗を掲げていた。

***

 茶林さんに脅されたんです。よよよ。
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2012年02月21日

『煙』

 我が指導教官の紹介で、会議の受付事務を手伝うことになった。
 当日は見事な冬晴れの日であった。午後零時半、開場する。路地裏のおんぼろビルの三階でどんな会議をやるのかしらん、と思案する。ppt資料のタイトルは『第二回もくもく大会』とあるから、愛煙家の集いか。首を傾げていると階下から甘い香りの煙が立ち上り、間もなく我が指導教官が現れた。大きな煙管を片手に煙をくゆらせる。火災警報装置、はついてないらしい。「励みたまえよ」と我が指導教官は記帳し会場内へ入っていく。それから続々と煙を吹かす老若男女がやってきた。
 午後一時、会議が始まる。暇になる。しかし観音開きの鉄扉の向こうは喧々諤々の様相のようだった。午後二時、休憩。扉が開くと大量の白煙と共に汗だくの参加者達が一斉に飛び出した。
 そして午後三時を過ぎた頃、拍手が鳴り響く。扉が開く。視界を奪われるほどの煙、煙、煙。思わず咳込み、腰を屈めつつ換気扇を手探りでつける。
「曲者じゃあ!」
 ぎゃあぎゃあ、わあわあ、阿鼻叫喚である。
 しかし次第に声は静まっていき、そろそろと目を開けるとそこには誰もいない。
 頭を落ち着かせる。
 ええと、とりあえず、あれだ。
 バイト代だけは欲しい。

***

 タイトル競作に出さなかったもの。今朝書いたのだから、いわゆる〆切に間に合わずというものです。
 しかしこれは詰め込み過ぎ。
posted by いさや at 01:01| Comment(0) | 書き物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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