2012年11月19日

チベ物語

「チベ物語」

 ある晩、門前の妖怪小僧はこのような夢を見た。牧草で満ちた緩やかな丘陵と一面の空、牧草を食む動物たち。その中で一人たたずむ精悍な顔立ちの青年は門前の妖怪小僧が見慣れぬ僧衣を着ていた。
 他にも色々な経験をしたような気がするが、門前の妖怪小僧が目を覚ましたときに覚えていたのはこれだけだった。まだ眠たい目をこすりながら、しかし夢で見た青年の横顔だけがなぜだか忘れられずにいた。
「不思議なこともあるものだなあ」
 門前の妖怪小僧は今日も聞きかじりの経を読み上げる。百年間読み続けているが、相変わらず意味はわからない。
posted by いさや at 01:12| Comment(4) | 落書き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月16日

(無題2)

(無題2)

 ……一体何が起こったのだろう。気が付いたら私は吹っ飛んでいた。雲を突き抜けコンコルドを追い越し、視界の端に地球の円形を認める。このまま空気摩擦で死んでしまうのか。気が遠のくうちに高度が下がり、懐かしの祖国、故郷、そして我が街、我が家が見えてくる。天文学的な確率の幸運に感謝する。最期がここなら思い残すこともない。が、神様は意地が悪いらしく、私が突っ込んだのは隣家の幼馴染の部屋だった。柔らかい感触と、悲鳴。私は頬を叩かれ、気を失った。

***

 茶林プレゼンツ。
 全ての元凶はこのツイート。
「ochabayashi@isayann そうだ胸に埋めたら張り飛ばされて地球一周してきて胸のクッションで助かったぜっていう話を書 via web」
posted by いさや at 23:09| Comment(0) | 落書き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

(無題)

(無題)

 真珠である。親指大の大変立派なものである。あんまり立派だったので祭壇に飾ることにする。浅瀬に作られた大理石の祭壇に飾る。暮れ泥む空。波が寄せて返す。手のひら大の深紅の絹に真珠を乗せると、ちょうど夕陽と重なる。眩く、とても目を開けていられない。高鳴る潮騒は幻聴のようで幻聴ではない。間もなく沈む祭壇、潮位はぐんぐんと、しかし静かに高度を上げていく。私は真珠を拾わなければならない。一度だけ天を仰ぎ見て海に潜る。潮位の上昇速度よりも速く泳ぎ下っていくと間もなく一点の深紅と、それよりもさらに小さい真珠を発見する。深紅に迫るほどにそれは大きくなる。視界の端まで深紅に染まる。次いで、真珠色に染まる。私の手のひらが真珠の表面に触れる頃には辺り一面は真珠の地平である。見上げれば、暮れ泥む空。寄せて返す波の音は幻聴のようで幻聴ではない。音のする方へ歩き出す。凹凸もなく滑らかだった地表が次第に色彩を帯びだす。草地に変わり、木々が生まれ、ほとんど洞窟のような森を歩く。その彼方には常に黄金色の光に溢れる出口がある。潮騒は止まない。幻聴のようでしかしやはり幻聴ではない。歩く。歩き続ける。そうして出口を抜けるとそこは浅瀬である。既に踝は海水に浸っていた。振り返れば森はない。全方位にわたって水平線が広がる。ただし墓石のような大理石が立っている。歩きだす。足元に光るものを見つける。

***

 一行幅の細長い紙に両面印刷してメビウスの輪にしてみて、エンドレスな物語を作ってみやう、という話の流れで。
 しかしこれは長すぎるだろう。(583字)
posted by いさや at 22:38| Comment(0) | 落書き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月28日

ぼくたちのちっぱい

『ぼくたちのちっぱい』

 風呂上がりに髪を乾かしているときのこと。
 米粒くらいの小さな者どもが蛇口の上に、わらわら、わらわら、と集まってきて旗を掲げていた。

***

 茶林さんに脅されたんです。よよよ。
posted by いさや at 21:29| Comment(0) | 落書き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月07日

1000人の胸を1回ずつ揉むのと1人の胸を1000回揉むのとではどちらが貴いのか

「1000人の胸を1回ずつ揉むのと1人の胸を1000回揉むのとではどちらが貴いのか」

「召集ー」
 頭の中の小人を100人だけ集める。
 まず一人ずつに、上記の問いかけに答えてもらう。
 その後、彼らには帽子を渡して被ってもらう。帽子の色は赤色と青色の二色である。帽子の色は問いの答えと対応したものであるが、問いに対する回答と帽子の色の対応関係は明確ではない。さらに、彼ら自身は自分が何色の帽子を被っているのかを知らない。
 小人たちにルールとして提示したのは、以下の項目である。

 一、他の小人との会話やそれに準じた意思伝達行為の禁止
 二、自分の帽子を脱いで色を確かめる行為の禁止
 三、小人全体で一度だけ私に質問することができるが、その回答は質問した一人にしか知らされない

 これだけを約束させた上で、小人たちには自分の帽子の色が何色であるかを推測させた。

  *

 まず小人たちが行ったのは、自分の周囲の者たちの観察である。皆が何色の帽子を被っていて、意見の比率がどの程度であるのかがここから推測することができる。そこで彼らが最初に自問することは、果たして自分はメジャーであるかマイナーであるか、ということだ。
 もしも比率が極端であれば、自分の信念がより一般論に近いあるいはかけ離れていると信じることができる場合には、かなりの蓋然性で以て自分の帽子の色を推測することができただろう。しかし動きがないところを見れば、帽子の色の比率はおおよそ拮抗していることがわかる。
 このままでは事態が動かないので、次に小人たちは私に質問することを検討する。しかし一切の意思伝達行為を禁じているために、誰がどのような質問をするのかを議論し決定することができない。従って、各々が独自の考察の結果最適であると信じられるような共通の質問を考える必要が生じる。それが唯一のコンセンサスを得る手段である。
 長い沈思黙考の末、最初の一人が私の前に進み出る。彼は私に質問をし、私はそれに答える。
 答えを得た小人は群れの中に戻ると、自分と帽子が色違いの一人を選んで手を握った。
 手を握られた小人は、握ってきた小人の帽子の色を見て、それと同じ小人の手を握る。
 かくして赤色、青色、赤色、青色、と並んだ帽子の列ができ、最後に赤色の帽子の数人が残る。
 このような操作の結果、とうとう彼らは自分の帽子の色が何色であるかを知ることができた。

 ところで自分の帽子の色を知るという目的の下では一致団結した小人たちが、上記の問いに立ち返って一たびディベートを開始すると途端に険悪な雰囲気になる様は、なかなか考えさせられるところがあるものである。

***

つい一時間ほど前に「このテーマで書け」と言われたので。
フットワークは軽ければ軽いほど良いものです。
posted by いさや at 01:01| Comment(2) | 落書き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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