2008年04月14日

銀天街の神様

「銀天街の神様」

 夕方から夜にかけては銀天街が最も人で溢れ返る時間帯だ。人の数の二倍の足が東西銀緯路と南北銀経路を行く計算だ。歩きづらい。
 あ、猫さんだあ。
 本当だねえ。
 こら人間、手を伸ばすな体を抱くなひげを引っ張るな。痛いだろう。
 人間の腕を逃れて路地に篭るとやっと安心して毛繕いができる。行き交う人の足を眺めながら、そういえば今宵は新月かと思い出した矢先に背後より、
「こんばんは」
「よお小僧」
 裸足の小僧がにこにこと立っていた。小僧は穴の空いた布を頭から被り、足の爪は黒く汚れている。しかしこれでも神なのだ。
 小僧は私の隣に膝を抱えて座る。往来を人の足が行く。大きな足に小さな足、愉快な足取りに哀愁の足取り、様々だ。
「ここからは民の生活がよく見える」
「そうだな」
 空を見遣ると銀天街を覆う紗に星が透け始めていた。遠くでドン、ドン、と太鼓を鳴らす音がする。
 儀式が始まる。紗に透けた星星は中央の銀の池に身を宿し、小僧は網で星を掬って人間に配るのだ。その星には交通安全、学業成就の効があるという。
「行ってくるよ」
「ああ」
 小僧が路地の奥に消える。ドン、ドン、と太鼓が鳴る。往来を人の足が行く。一様に左から右へと流れてゆく。






 500文字の心臓タイトル競作「銀天街の神様」○:3

 ひょーた君から「これものすごい好き」を頂きましたよ。わーい。
 今回は自分でもびっくりするくらいタイトルに素直に書けた気がする。

解説もどき
posted by いさや at 02:51| Comment(2) | 書き物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする